「犯罪加害者の家族」に関する資料の紹介
「犯罪加害者の家族」は過酷な状況におかれ、自死を選ぶ人も少なくありません。しかし、追い込まれる状況についてあまり知られていないのが実情です。
「犯罪加害者の家族」が置かれる状況を知っていただくために、それらについて触れられた資料、その他関連するものをご紹介します。
■書籍
『もう逃げない』
林眞須美死刑囚長男
21年前の朝、目が覚めたらぼくは
「殺人犯」の息子になっていた――
いじめ、差別、婚約破棄……
迷い、苦しみながら、それでも強く生きていく。
事件以来21年間、親、そして世間から架せられた
重い「十字架」を背負い続ける
和歌山カレー事件、林眞須美死刑囚の長男が初めて明かす
「罪と罰」、そして「生きること」の本当の意味。
『僕の父は母を殺した』
大山寛人
母を殺したのは、父だった。 非行に走り、ホームレスになり、自殺未遂を繰り返す日々。
だが父の死刑判決を知り、父に面会した日から父を憎む気持ちに変化が生まれ……。
『父と母 悔恨の手記 「少年A」 この子を生んで……』
「少年A」の父母
14歳の息子Aが、神戸連続児童殺傷事件の犯人「酒鬼薔薇聖斗」だったとは――。
逮捕当日まで、我が子の犯行を想像すらできなかった両親が、悔恨の涙とともに綴った手記。
「帰れ、ブタ野郎」逮捕以来、初めて少年鑑別所に収容されたAに面会に行ったとき、この一言を浴びせられた。
そして、涙をいっぱいに溜めた目をして、すごい形相で睨みつけてきた。
私たち親は、どこで、何を、間違えたのか。息子の何を見ていたのか。Aが抱えている問題はどこまで深刻だったのか。
そして父親として、母親として、これから何ができるのか。
14年にわたるAとの暮らし、事件前後の家族の姿、心情をありのままに記した、衝撃のベストセラー。
『癒やしと和解への旅 犯罪被害者と死刑囚の家族たち』
坂上 香
殺人事件の被害者遺族と死刑囚の家族がともに旅をし、語り合う――。
このような世界でも希有な旅「ジャーニー・オブ・ホープ」が米国で始まった。
被害者遺族への社会的なサポートは? 死刑を宣告された少年たちはなぜ犯罪者になったのか?
さらに「ジャーニー」に集う人びと、それぞれの心の葛藤、世間との闘いを丹念なインタビューで綴る渾身のルポ。
■小説、マンガ
『ある男』
平野 啓一郎
愛したはずの夫は、まったくの別人であった。
「マチネの終わりに」から2年。平野啓一郎の新たなる代表作!
弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。
宮崎に住んでいる里枝には、2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。
長男を引き取って14年ぶりに故郷に戻ったあと、「大祐」と再婚して、新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。
ある日突然、「大祐」は、事故で命を落とす。悲しみにうちひしがれた一家に「大祐」が全くの別人だったという衝撃の事実がもたらされる……。
里枝が頼れるのは、弁護士の城戸だけだった。
人はなぜ人を愛するのか。幼少期に深い傷を背負っても、人は愛にたどりつけるのか。
「大祐」の人生を探るうちに、過去を変えて生きる男たちの姿が浮かびあがる。
人間存在の根源と、この世界の真実に触れる文学作品。
『手紙』
東野 圭吾
武島剛志と直貴は二人きりの兄弟だった。
弟の大学進学のための金がほしくて、剛志は空き巣に入り、強盗殺人の罪を犯してしまう。
服役中の剛志から直貴のもとには、獄中から月に一度、手紙が届く。
しかし、進学、恋愛、就職と、直貴が幸せをつかもうとするたびに、「強盗殺人犯の弟」という運命が立ちはだかる。
ある職場で疑いをかけられ、倉庫に異動させられた直貴のもとに現れた男性は、「差別はね、当然なんだよ」と静かに言うのだった――。
年月が流れ、家族を持った直貴は、ついにある決意をする。
人の絆とは何か。いつか罪は償えるのだろうか。
犯罪加害者の家族を真正面から描き、映画化(主演・山田孝之)、舞台化もされ、感動を呼んだ不朽の名作。
文春文庫史上最速でミリオンセラーとなり、200万部を売り上げるベストセラー。
『うつくしい子ども』
石田衣良
閑静なニュータウンの裏山で見つかった9歳の少女の遺体。
犯人として補導されたのは、<ぼく>の13歳の弟だった。
まだ幼い少年による残忍な事件に世間は騒然とし、
14歳の<ぼく>や被害者の同級生でもあった妹、そして両親の日常は一変します。
日常のすべてが崩れていく中で、
中学生の兄は、弟に何が起きたのか知りたいと調査を始めます。
加熱する報道、学校での嫌がらせ……
絶望と痛みの先にみえるものとは。
少年の闘いと成長を描く傑作長編ミステリー。
『テセウスの船』
東元 俊哉
1989年6月24日、北海道・音臼村の小学校で、児童16人を含む21人が青酸カリで毒殺された。
逮捕されたのは、村の警察官だった佐野文吾。
28年後、佐野の息子・田村心は、死刑判決を受けてなお一貫して無罪を主張する父親に冤罪の可能性を感じ、独自に調査を始める。
事件現場を訪れた心は、突如発生した濃霧に包まれ、気付くと1989年にタイムスリップしていた。
時空を超えて「真実」と対峙する、本格クライムサスペンス、開幕。
【映像】
『対峙』 (2021年/アメリカ/111分)
監督・脚本=フラン・クランツ
高校銃乱射事件の被害者家族と加害者家族による対話を描いたドラマ。
アメリカの高校で、生徒による銃乱射事件が発生。多くの同級生が殺害され、犯人の少年も校内で自ら命を絶った。
事件から6年。息子の死を受け入れられずにいるペリー夫妻は、セラピストの勧めで、
加害者の両親と会って話をすることに。
教会の奥の小さな個室で立会人もなく顔を合わせた4人はぎこちなく挨拶を交わし、対話を始めるが……。
『ある男』 (2022年/日本/121分)
監督=石川慶 原作=平野啓一郎
弁護士の城戸は、かつての依頼者・里枝から、亡くなった夫・大祐の身元調査をして欲しいという奇妙な相談を受ける。
里枝は離婚を経験後に子どもを連れて故郷へ帰り、やがて出会った大祐と再婚、新たに生まれた子どもと4人で
幸せな家庭を築いていたが、大祐は不慮の事故で帰らぬ人となった。
ところが、長年疎遠になっていた大祐の兄が、遺影に写っているのは大祐ではないと話したことから、
愛したはずの夫が全くの別人だったことが判明したのだ。
城戸は男の正体を追う中で様々な人物と出会い、驚くべき真実に近づいていく。
『誰も守ってくれない』
平凡な4人家族の船村家で、ある日、一家の未成年の長男が小学生姉妹殺人事件の容疑者として逮捕されてしまう。
東豊島署の刑事・勝浦(佐藤浩市)は容疑者家族の保護を命じられ、保護マニュアルに従って15歳の沙織(志田未来)をマスコミの目、そして世間の目から守るため、ホテル、アパート、マンションと逃避行を始める。
■犯罪被害者遺族の著書
『謝るなら、いつでもおいで』
川名 壮志
佐世保の小学校で小6女児が仲の良い同級生に殺害された痛ましい事件から10年。
被害者家族は、どう精神のバランスをとり生きてきたのか。
子どもの心がわからない全ての人に贈る渾身のノンフィクション。
「私がカッターで切りました」。幼さを残す少女は動揺する大人を前に淡々と告げた。2004年長崎県佐世保市。小六の女児が白昼の校舎内で同級生の御手洗怜美さんを刺殺した。
11歳――少年法すら適用されず人殺しの罪に問うことはできない。だが愛する者を奪われた事実は消えない。苦悩する被害者家族、償いきれない業火を背負った加害者家族……それぞれの心のひだを見つめたノンフィクション。
『妻よ!: わが愛と希望と闘いの日々』
『妻よ!: 松本サリン事件を乗り越えて』文庫
河野 義行
善良な一市民が、突然無差別テロ事件の犯人に仕立てられる恐怖。その疑惑を晴らし、警察・マスコミによるいわれなき人権侵害と戦う著者が、今なおもの言わぬ妻・澄子さんとの愛と希望の日々を綴る。
『弟を殺した彼と、僕』
原田 正治
1984年に愛知県で発覚した「半田保険金殺人事件」。本書の著者である原田氏の実弟・明男さんを含む三人が保険金目当てで殺害された、残虐非道な事件である。この事件によって、主犯格の長谷川敏彦をはじめ3人が逮捕・起訴された。当初は事故死だと思われていた弟が、実は殺されていたという事実を知り、著者は大きな衝撃を受ける。平穏だった暮らしは一変し、弟を失った深い悲しみは、時を待たず長谷川敏彦への憤怒と憎悪の念へと形を変えていった。「長谷川に極刑を望む」……著者の願いはただそれのみだった。
裁判が始まり、一審・二審と長谷川には当然のごとく死刑判決が下されていった。しかし、著者の心の中には「死刑とはいったい何だろう」という疑念が渦巻きはじめる。「罪を背負い、生き続けることこそが長谷川にとって真の意味での罰であり、弟への償いであり、被害者遺族である自分が望んでいることではないのか」。
最高裁での判決の直前、著者はついに長谷川敏彦との対面を果たす。彷徨する魂に、果たして救いの日は訪れるのだろうか?
■犯罪に関する書籍
『犯罪・非行の社会学 常識をとらえなおす視座』
岡邊 健 (編集)
犯罪や非行が社会のなかにあることの意味やそのメカニズムを,気鋭の社会学者たちが解説。
基礎的な考え方から研究法,データの読みとき方をていねいにフォローし,一冊で研究の世界へといざなう。
『よくわかる犯罪社会学入門』
矢島正見 (著), 丸秀康 (著), 山本功 (著)
社会学の視点から犯罪・非行がわかる!
犯罪社会学の成り立ち、犯罪に関しての基本的な統計の読み方、
社会学の基礎的な調査方法などをコンパクトにまとめた本。
代表的な理論もわかりやすく紹介し、少年法改正や裁判員制度等の法改正も踏まえて重要ポイントを改訂。
『犯罪と社会 初歩からはじめる犯罪社会学』
細井洋子 (著), 鴨志田康弘 (著)
『社会のなかの刑事司法と犯罪者』
菊田幸一 (編集)
第一級の刑事法学者・犯罪学者・実務家を結集して新自由主義・市場化社会のなかの刑事司法の貧困を考察し将来像を鋭く提示する。
犯罪者の処遇、刑務所の問題、青少年犯罪、被害者などに多岐にわたる論文で、門外漢の人にも充分に判る内容となっています。
刑事司法が正しく理解され、マスコミに騙されないようにするためにも。
『犯罪の世間学 なぜ日本では略奪も暴動もおきないのか』
佐藤直樹 (著)
日本独特の秩序で法のルール以前に私たちを縛る「世間」が、その排他性を強めて犯罪を生み出している。
1990年代以降の犯罪の厳罰化、2000年代以降の殺害事件や脅迫事件を「世間」の視点から読み解き、
息苦しさや閉塞感が増す日本の「空気」に迫る時代診断の書。
『犯罪と日本社会の病理 破壊と生の深層社会学』
間庭充幸 (著)
現代社会の深層分析を通して新自由主義が煽る異端と差別の日本的構造を解明―同調社会日本のゆくえ。
『犯罪と市民の心理学 犯罪リスクに社会はどうかかわるか』
小俣謙二 (著, 編), 島田貴仁 (著, 編)
犯罪という社会的現象が市民の意識や行動にどのような影響を与え,それに市民や社会がどうかかわるか。
本書では,従来の加害者を中心とした犯罪心理学から,犯罪不安やリスク認知など「犯罪と市民」との関係性に
焦点を当てた新しい研究を取りまとめた。
防犯や犯罪被害者支援など,社会的課題への対応も考察。
■差別に関する書籍
『偏見の構造: 日本人の人種観』
我妻洋 (著), 米山俊直 (著)
日本人は美醜をどのように捉えてきたのか、社会的な価値観から紐解く偏見についての考察。
『「差別」のしくみ』
木村草太 (著)
差別をしている人には、「悪いことをしている」とか「不当な差別をしている」といった自覚がないのが一般的だ。
自覚のない人に「差別だ」と言っても、実りあるコミュニケーションにはならないだろう。差別を自覚し、止めてもらうには、何が必要なのだろうか。
本書では、「許されない差別を糾弾する」ことよりも、「差別のしくみを分析し、どこにその悪性があるのかを解明し、問題解決の糸口を発見する」ことに努めた。
『同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか』
鴻上尚史 (著), 佐藤直樹 (著)
新型コロナウイルスがあぶり出したのは、日本独自の「世間」だった!
長年、「世間」の問題と格闘をしてきた二人の著者が、自粛、自己責任、忖度などの背後に潜む
日本社会の「闇」を明らかにする緊急対談。
生きづらいのはあなたのせいじゃない。
世間のルールを解き明かし、息苦しさから解放されるためのヒント。
『「差別はいけない」とみんないうけれど。』
綿野 恵太 (著)
セクハラや差別が跡を絶たないのは、「差別はいけない」と叫ぶだけでは、
解決できない問題がその背景にあるからだろう。
反発・反感を手がかりにして、差別が生じる政治的・経済的・社会的な背景に迫る。
「週刊読書人」論壇時評で注目の、気鋭のデビュー作。